2011/05/31

『メンタルヘルス対策セミナー』へ行ってきました。 #ptsd_jp

先週金曜日、半蔵門まで『メンタルヘルス対策セミナー』へ行ってきました。
主に人事等の方が、被災などした社員に対して、どう心の不調に対処するのかが論点でした。
PTSDに関しては以前の日記で書かせていただいていますので、今回は
要点を箇条書きしたいと思います。

1.今回の震災の特徴
1) 巨大地震と群発地震⇒区切りの付きにくい被災感
2) 津波⇒広域の町村を破壊したたため、再建の目途が立たない
3) 原発事故⇒見えない物質飛散への不安感
日常用品汚染の不安
よって、収束の目途が立たない不安感があり、急性期と慢性期の区切りが遅れている。

2.被災者の心理(直後から急性期)
1) 恐怖、衝動的行動(パニック)、虚脱状態(ショック)
2) 「物語」作り、幻想⇒別の世界での出来事だと思いこむ
3) 相互扶助、至福感、多幸症⇒いずれ、実は幻想だと気がつく
4) 下方比較⇒自分はまだマシな方だと思いこむ。自分も被災者であることを自覚しにくい。
我慢しすぎて、不安を表に出せない(役職のある人や責任のある立場の方)
5) 不安に基づく症状⇒揺れや地震に対する過敏反応。睡眠障害、過食、拒食
疲労感、軽躁状態

3.被災者の心理(急性期以降)
1) 不安による身体症状の継続
2) 被害感、怒り、非遺棄感⇒マスコミ、報道の減少
3) うつ(怒りの裏返し)、自責、喪失感
4) 生き残り罪悪感⇒生きているのが申し訳ないなど

4.子供に現れやすい反応(身体反応)
1) 身体症状⇒チック、夜尿、睡眠障害(寝付けない・悪夢)、過食、拒食
2) 退行、赤ちゃん返り
3) 過敏反応⇒揺れ、音、暗闇
4) 死へのこだわり⇒「天国って何?」「死んだらどうなるの?」等
5) ストレスの隠蔽⇒オネショを隠そうとしたり
6) 親との症状平行

5.子供に現れやすい反応(対人反応)
1) 分離不安⇒親から離れられない
2) わざと困らせる行動
3) 同じ話しを繰り返す
4) ケンカ
5) 攻撃的な遊び、再現遊び⇒震災、津波ごっこなど
6) 将来の逸脱行動

6.悲嘆の心理(PTSDと類似する。ご家族や友人を亡くされた方に起こる喪失感)
1) 喪失直後
①精神的打撃と麻痺(解離。現実感がない等)
②パニックと不安
③否認、抵抗、駆け引き⇒認められない、受け止められないなど。ご遺体との対面は大事
2) 喪失への直面
④怒り、不当感、恨み、罪悪感⇒どうして自分を置いて亡くなったのか。
あんなに良い人がどうして…。あのとき私か○○していれば等
⑤侵入、愛着と思慕(PTSDと違う点)、空想など
⑥混乱と抑鬱⇒不安、孤独、絶望、抑鬱、思考や行動力低下、虚脱感、無力感等
⑦死の意味の探求、死の社会化⇒生きていたことの意味。愛されていたことの確認等 
3) 適応と希望
⑧あきらめと受容⇒大切な方が亡くなった事を認め始める
⑨希望⇒ユーモア、将来の計画、新しい自分の形成

PTSD=忘れたい
悲嘆=忘れたくない⇒喪失した人、物への手がかりとなるような物を手に入れると良い

7.惨事ストレス(特に医師や看護師、消防、救急隊員、保育士、地元行政など)
患者さんや部下、他の被災した人を不安がらせてはいけないと思いがち⇒ケアが遅れる

急性期のストレスケア
①ストレス反応の自覚(異常な出来事の後の正常な反応)
②休養と静養⇒職場に不調が出ている人が居たら休ませるなど
③親しい人と一緒に
④仲間と話す⇒互いに支え合える関係の中で。同じ体験をした者同士で。
⑤被災地から離れる(一時的でも良い)
⑥専門家による援助

長期的なストレスケア
①ストレス反応の自覚(チェックリスト等用いる)
②生活リズムの確保
③発想の転換
a.起きてしまったことを忘れるのは無理である事
b.無理な考えに囚われていないか⇒「助けられなかった」「もっと出来たはずだ」等
c.喪失の受け入れ⇒失ってしまったものが戻らない事への自覚
d.体験が、人としての成長に繋がるという希望を持つ(ストレスと付き合いながらの成長)

8.被災者の長期的なストレスケア
1)仲間と話す、ソーシャルサポートの利用
2)積極的なストレス解消⇒リラクゼーション
3)過食、暴飲に気を付ける
4)感情の発散⇒ドラマやお笑いなどで泣く、笑う
5)趣味、スポーツ、年中行事⇒「自粛」はしないほうが良い
6)専門家による援助⇒自分も大変なんだと、声を上げて訴えること

9.職場で出来るストレスケア
1)トップからの支援表明⇒会社が社員を護る。見舞い、ねぎらい、敬意
2)職場内の支え合いの促進⇒慰労会、話す場所をもうける
3)上司の研修⇒社内での温度差を無くし、話を聞ける環境を作る
4)休暇の付与
5)追悼の会なども⇒怒りのぶつけ合いにならぬよう
6)心身の健康管理⇒心の問題より、体の問題から先に入る
7)専門医への紹介⇒身体症状の軽減から話を勧める。産業医と繋がりを持っておく


ずいぶんと長い議事録になってしまいましたが、お役立ていただければ幸いです。
ご質問等ありましたら、Twitter ID sykes_m またはハッシュタグ#ptsd_jpまでどうぞ。
メールでしたら、当ブログの右下にメールフォームがあります。ご利用下さい。

2011/05/21

震災後PTSDの今後の対策について話してきました #ptsd_jp #311care #jishin

今日は、当初の予定ではトラウマ解凍ワークの日だったのですが、
人数があまり集まらなかった為中止となり、変わりに、主催の女性2名と
渋谷でお茶をしながら、2時間ほどお話しさせていただく機会を得ることが出来ました。

そろそろ、共同体意識を持って被災者自ら活動的になるハネムーン期を過ぎ、
忍耐が尽きる幻滅期に入る頃です。幻滅期では、メディアの災害報道が少なくなり
被災地以外の人の関心も薄れ、被災者は無力感・倦怠感にさいなまれるようになります。

幻滅期に入ったときに注意することは何か。それは、「励まさないこと」です。


だいじょうぶだよ
がんばろう
よくやっているよ
なんとかなる
考えすぎてるよ
思い過ごしだよ
はやく忘れなさい
明日はきっといいことがあるよ
きみならできるよ
ひとりじゃないよ
みんなで乗り越えよう

など、到って前向きな発言を止める必要があります。
(参考にしたサイト 災害時のPTSDを防ぐために、3つのこと。)

こうなると、もう相手に何を言ったらいいのか分からなくなりますね。
私も同様です。Twitterで何を発言していけばいいのか、悩んでしまいます。
ただ、出来ることはあります。それは「共感する事」です。
つい「何か言わなくては」と思ってしまいがちですが、黙って傾聴することも大切です。
SOSを出してくれた人に対して出来ることです。

また、PTSDは、例えば仮設に入れたなどしてホッとしたとき、力が抜けたときなどに
特に発症しやすいことや、地域性もあって、ご自分からSOSを出す方が少ないこと、
そういった方をどうケアしていけば良いのか、対話の場を設けるにはどうしたら良いかなど
実に内容の濃いお話しをさせていただくことが出来ました。

もちろん、数時間話しただけで良い結論が出たわけではありませんが、今後
どういった活動をしていこうか、今出来ることは何か。
その点については進歩的な方向性が漠然とですが見えてきた気がします。

ポータルサイトを作るのも方法かも知れません。
近場に避難してきた方をお招きして、集会を開くことが出来るかも知れません。
PDFなどを用意して配ることが出来るかも知れません。

可能性は色々とあります。
微力でも、みなで力を合わせれば何かが出来るかも知れない。
そんな希望が見えてきた、今日のお茶会でした。

今後、1PTSD患者である私が、どれほどのことが出来るかは分かりませんが、
諦めることなく、Twitterなどでも呼びかけを行っていきたいと思います。

2011/05/20

PTSDフォーラムに参加して #ptsd_jp


もう先週の木曜になってしまいましたが、都内で開催されたPTSDフォーラムへ行って来ました。

まずは、現地でのボランティア活動の様子が報告されました。
主に子供達のケアが目的で行かれたそうです。

精神的なショックから、楽しい場に入ってこられない子供達も居たり、
小さな子供を抱えながら、避難所でストレスフルな生活を強いられているパパやママ。
父子家庭、母子家庭になってしまった人。若い人達にもショックが見られたそうです。
現地へ行かないと分からない色々な事。
仮設に入ってから孤立することも心配されます。

とても「頑張ろう」などと言える状況でないのは確かで、中・長期的なケアが必要です。
一時的なボランティアとして「今の大変」を支えるだけでなく、「ずっと先の大変」も
支える必要がある、友達になる必要があると報告されました。

そんな中で感じられた、必要なボランティア・スキルというものが挙げられました。

・自分で行く(進んで行く姿勢)
・健康である(現地で病気になっては、かえって迷惑をかけます)
・指示待ちせず自分で動く(柔軟な思考が必要)
・コミュニケーションが上手
・フレキシビリティがある
・視野が広い
・無理をしない
・与えるではなく寄り添う(上から目線は厳禁である事)
・約束を守る(「また来るね」と言ったら、必ずまた行く事)
・自分らしく
・笑顔

鬱専門カウンセラーの方からは、顔と顔をつきあわせた姿勢が必要とも報告されました。

また、一緒に「居る」事の大切さ。物理的にも精神的にも、居場所、よりどころとなる事。
一緒に「考える」事の大切さ。共に支え合い、Togetherする事の大切さが伝えられました。

そして、安易に「分かります」と言ってしまうのでなく、気持ちを教えて貰うことの大切さ、
分かろうとする気持ちが相手に伝わると言うことも大事であると伝えられました。

また、ほめる、ありがとうの気持ちで接する事も必要であるとされていました。
具体的には、「あなたの笑顔が見られて良かった」「よく今日まで生きてきてくれましたね」など。

スキンシップの大切さや、自分自身が元気である必要性も示されました。
向き合うと、感情がひきずられてしまう事がありますが、それは向き合っている証拠。
愚痴を言える人を自分の回りに確保し、ニュートラルに戻れるようにする
必要性も付け加えられました。

PTSDに関しては、「物事が落ち着いてから発症する」ことや、
「本人も何が起こっているのか分からない。自覚しにくい」点が挙げられました。

セルフケアとしては、
心拍数が早いときは呼吸を整えてみる。
外に依存するのではなく、自分を信じようとする努力。
昔と今を比べず、元に戻そうとせず、今ある物から作り出せる生活をする事。
自分に「変える力」がある事を信じる。
などが挙げられました。

周囲が出来ることとしては、
本人のペースを見守りながら、無理に引っ張り上げようとしない事。
相手の求めている物を提供してあげる事が挙げられ、
「怖がってイイ」、「気持ちや体に変化が起きるのは当然」と肯定、受容する必要性が。
「大変でしたね」「お辛かったでしょう」「よく頑張られましたね」など共感すること。
心の内にたまったものを吐き出させ、話しをすることや、子供であれば
遊びを通して外へ向けての吐き出しをさせる事。
例年の行事などを行うことで明日を感じられるような「前向きな行動」へ導くことが挙げられました。

まず大事なのは、安心、安全な環境を確保すること。
思い出すものから初期は遠ざけ、少しずつ慣らすこと。(フラッシュバックからの回避)
回復には時間がかかって当然であり、長い目で見ることの大切さが言われました。

今後のTwitterでの私の活動の背中を押してくれる、とても良いフォーラムでした。
私の考えの後ろ盾をもらったような気がします。

とはいえ、そろそろハネムーン期と言われる時期から、幻滅期に入る頃。
ツイートの内容をどう変えていくのか頭の痛いところですが、無い知恵絞って
色々と考えていきたいと思います。