見出しの記事が出てきたことを受け、
ASD(急性ストレス障害)とPTSD(心的外傷後ストレス障害)の違いを
簡単ではありますが、ご説明していきたいと思います。
[ASD(急性ストレス障害)]
PTSDと似たような症状を起こしますが、主に生死に関わるようなトラウマ(心的外傷)を
経験した後、異常な事態の後に起こる正常な心の反応を示します。
数時間、数日から4週間以内に治癒する一過性の障害を指します。
症状が4週間以上続く場合に、PTSDを考慮します。
■症状(主な症状は下記の3つです)
・追体験 フラッシュバックとも言う。トラウマの原因となった出来事を繰り返し鮮明に
思い出したり、悪夢を見たりします。
・回避 トラウマに関する出来事や、関連する事柄を避けようとする傾向。
・過覚醒 神経が高ぶった状態が続き、不眠や不安が強くあらわれます。
■治療法・予後
4週間以内の短期間の薬物治療や精神治療が行われます。
予後は良好で、時間とともに良くなっていきますが、場合によってはPTSDに
発展することがある為、慎重な経過観察が必要です。
[PTSD(心的外傷後ストレス障害)]
ASDと同じような症状が4週間以上続いた場合にPTSDを疑います。
被災後すぐにASDとして症状が出る場合もあれば、数ヶ月後、数年後になって
発症する場合も有ります。
■症状(主な症状はASDの3項目と変わりません)
精神機能がショック状態に陥り、パニックを起こす場合があります。
そのため、その機能の一部を麻痺させることで一時的に現状に適応させようとするため、
事件前後の記憶の想起の回避・忘却する傾向、幸福感の喪失、感情鈍麻、
物事に対する興味・関心の減退、建設的な未来像の喪失などが見られます。
精神の一部が麻痺したままでいると、心理的に異常信号が発せられ、
不安や頭痛・不眠・悪夢などの症状を引き起こす場合があります。
筆者を含め周囲にいるPTSD罹患者の場合、PTSDと併発して
うつ病、パニック障害、被災時の記憶の欠如、時によっては解離性人格障害(別人格)が
見られる場合が存在します。
特に、悪夢やフラッシュバックはなかなか消失しないため、慢性的な過覚醒、
慢性的な睡眠障害になる事があります。
これらの症状が1か月以上持続し、社会的、精神的機能障害を起こしている場合に
PTSDと診断され、症状が3ヶ月未満であれば急性、3ヶ月以上であれば慢性とします。
多くの場合は被災後6ヶ月以内に発症しますが、6ヶ月以上遅れて発症する遅延型も有ります。
■治療法
薬物療法と精神療法が有ります。
「予後」の項目がないのには理由があります。
PTSDの多くの場合は慢性化することが多く、数年、十数年…と長患いすることが多いからです。
社会生活に復帰した段階で「回復した」とする場合もありますし、怖い記憶は消せないため、
生涯にわたって悪夢を見続ける可能性もあるため、「回復しない」とする場合も有ります。
ここまで読んで、もうお分かりの方もいらっしゃると思いますが、PTSDは、ASDが
表面化したときに、早急で適切な処置を受けることが最も重要と言えます。
Twitterなどでも再三つぶやいていますが、患者本人が我慢しないことが重要ですし、
周囲も、「いつもと様子の違う人が居ないか」気を付けてあげる事も大切です。
なにより、「精神科医療」という非常にデリケートな問題であるが為に、自ら
治療を拒んだり、周囲が理解を示さないと言った事柄は避けなければなりません。
また、震災後2週間ちょっとという現段階で、既にPTSDにかかった人が居るかのような
報道、風評被害などは決して有ってはなりません。
無知は不安を呼び、不安は差別を呼び、差別は適切な医療現場から患者を遠ざけます。
上記でも述べましたが、症状が出てから1ヶ月以上経ってからでないと、PTSDとは診断しません。